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NASAの海洋観測衛星PACE(Plankton, Aerosol, Cloud, ocean Ecosystem)の性能を検証するため、2024年秋、カリフォルニア州モントレー湾で大規模な観測が行われました。この時期、モントレー湾では通常よりも大きな植物プランクトンのブルームが発生し、魚、イルカ、クジラ、海鳥といった多様な生物が集まり、まさに生命の楽園と化していました。この貴重な機会を捉え、NASAエイムズ研究センターの研究チームは、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)や海軍大学院といった研究機関と協力し、2週間にわたる集中的な調査を実施しました。
PACEミッションは、地球の海洋生態系を詳細に観測し、植物プランクトンの種類や分布、大気中のエアロゾル、雲の特性などを把握することを目的としています。植物プランクトンは、地球の二酸化炭素吸収において重要な役割を果たしており、その動態を理解することは、気候変動の影響を予測し、対策を講じる上で不可欠です。
今回のモントレー湾での観測では、航空機と船舶の両方を用いて、植物プランクトンのブルームを多角的に捉える試みが行われました。航空機に搭載された高性能センサーは、広範囲にわたる海洋の色を分析し、植物プランクトンの種類や量を推定します。一方、船舶からは、海水のサンプルを採取し、プランクトンの種類を特定したり、栄養素の濃度を測定したりといった詳細な分析が行われます。これらのデータを組み合わせることで、PACE衛星が取得するデータと実際の海洋環境との整合性を検証し、衛星データの精度を高めることができます。
モントレー湾は、その独特な地形と海洋環境から、多様な植物プランクトンが生息することで知られています。特に、秋には栄養豊富な深層水が湧昇し、植物プランクトンのブルームが発生しやすい環境となります。今回の観測では、このブルームの発生メカニズムや、それが海洋生態系に与える影響についても調査が行われました。
NASAの研究チームは、今回の観測で得られたデータを詳細に分析し、PACE衛星のデータ処理アルゴリズムの改善や、海洋生態系モデルの高度化に役立てる予定です。PACEミッションは、地球温暖化が進む中で、海洋生態系の変化を監視し、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。今回のモントレー湾での観測は、その重要な一歩となるでしょう。